専修医研修Program

後期研修医・レジデント(シニア)


精神科専修医(後期研修)プログラム

ごあいさつ

主任部長 青木 勉

世界標準の地域精神医療を実践することー千葉県北東部(東総地区)を日本のバンクーバー(世界の精神医療の先進地域)にすることーを目標にして医療を行っています。カナダ・バンクーバーにおいて、2011年1月には、1名の専修医が1ヶ月間の研修を、2011年6月には、専修医と看護スタッフ各1名が当科4回目となる精神医療視察を行い,大きな成果を上げることが出来ました。

精神医療は、生物・心理・社会的介入を3つの柱として、織りなされるアートです。当科では、11名の常勤精神科医師(うち精神保健指定医6名)、52名の看護師、8名の精神保健福祉師、4名の心理療法士、5名の精神科作業療法士、総計90名の専門スタッフが、チーム医療を行い、3つの分野をバランスよく実践しています。子どもからお年寄りまで、包括的にそして連続性を持って診療できるように、児童精神科等の専門外来や24時間一次から三次対応の精神科救急外来をおこなっています。また、 ACT(包括的地域生活支援)を行う旭こころとくらしのケアセンター、精神科救急病棟、多目的病棟、精神科デイケアセンター、作業療法センター、コンサルテーション・リエゾン等の臨床活動、他の精神科医療機関や保健所、児童相談所との連携を通じて、地域精神医療の実践を行っています。

これらの地域精神医療の実践を通して得られた知識と経験を生かして、2009年9月には、地域精神医療推進部を設立し、この分野の日本のリーダーを目指して活動しています。また、2011年3月に起きた東日本大震災では、当地も被災しましたが、いち早くこころのケアチームを設立し、活動しています。

心のケア講習
心のケア講演会


【精神科スーパー救急病棟(精神科救急入院料病棟)】

当科にはスーパー救急病棟があり、精神科救急の研修が行えます。
当院の精神科救急の研修には以下のメリットがあります。

  • 精神科救急の魅力
  • 地域から日々生じてくる精神科治療のニーズに迅速に応え、様々な患者さんの治療にあたります。経験する症例数は豊富にあり濃密な経験を積むことができます。精神疾患のダイナミズムに直接触れるかのような経験を通じて疾患に対する理解を深めることができます。また、急性期症状の混乱の真っ只中にいる患者さんとその家族の不安に寄り添うことは、たとえ精神科救急を専門とする予定のない方であっても、精神科医としてのキャリアの中で有意義な体験となることでしょう。

  • 総合病院精神科ならではの安心感
  • 器質性精神疾患(中枢神経感染症や膠原病等の身体疾患に由来する精神疾患)の患者さんや身体合併症を抱えた患者さんが入院することもあります。そのような場合でも当科は総合病院精神科であるので、診断や治療についてそれぞれ専門科の医師と連携をとって治療にあたることができます。入院後の検査で器質性精神疾患の診断が明らかになるという事は少なからずありますが、その場合でも他院に転院することなく当院で治療を完結させることができます。

  • 多職種との連携
  • 患者さんのより早くスムーズな社会復帰を目指して当科では入院直後より多職種で診療チーム体制を組みます。医師、看護師だけでなく精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士も加わり、それぞれが専門知識を出し合い患者さんの治療を考えていきます。その結果、単に早期の退院を目指すのみならず、患者さんの今後の生活にとってより良いと思われる治療方針をオーダーメイドで検討していくことができます。

文責 小倉


【多目的病棟】

ややゆったりとした開放病棟で、一部に児童専用のスペースも確保しています。
当院の多目的病棟での研修には以下のメリットがあります。

  • 多職種による退院支援、困難事例への対応力
  • 当院では多職種チーム介入により早期の退院を図れるように努めており、実際に平均在院日数も短縮されつつありますが、しかし、それでもなお退院に困難を抱えるケースは少数ながらも存在します。
    研修では、よりインテンシブな退院支援をより確実に行う過程にじっくりと参加することで、地域と患者さんの事情に応じたプランを立てていく力が養われることでしょう。

  • 早期介入・早期退院、また休息入院
  • 先にも述べたとおり平均在院日数が短縮されつつある状況ですので病棟に多少余裕が生じると早期介入・早期退院として短期入院の受け入れも可能となります。
    研修としては、地域でのサポートがあっても救急事例化必至と考えられる状態になった患者さんへの早期の介入・支援をしていく経験を得られるでしょう。
    また、病棟に余裕があることで精神病圏以外の疾病に関しても入院治療経験を積みやすい環境となることを想定しています。

  • 児童思春期入院治療スペース
  • 児童専用のスペースを確保していますので、児童思春期年代の患者さんたちの集団力動も意識しながら入院治療に当たることが可能です。詳細については【児童精神科】の入院治療の項目を参照してください。


【クロザピンによる薬物療法】

当院はCPMS登録医療機関でありクロザピンの処方が可能であり、CPMS登録医とともに診療することでクロザピンによる治療経験を積むことができます。

  • クロザピンによる治療抵抗性統合失調症の薬物療法
  • 従来なら閉鎖病棟で長期ないしは頻繁な行動制限利用もやむなしという患者さんが、開放病棟で治療可能となり、退院して外来通院となっていく過程を経験し、また副作用に対する対応について経験をつむことができます。


【児童精神科】

神経精神科では児童精神科領域の外来診療も行っており、病棟の一部に児童専用のスペースを設けるなどして児童思春期の患者さんにも入院治療を受けやすい環境を提供しています。

  • 児童精神科外来
  • 児童外来は、初診時の年齢で就学前ころから18歳程度までの方を対象にしています。こころの不調は成人に限らず児童でもみられます。患者さんご本人の生物学的な部分による場合や、家庭や学校など生活環境・社会的な環境による場合、友人関係やストレス、考え方の癖など心理的な部分による場合などさまざまです。

    精神疾患の早期発見・早期介入の一端にふれ、また若年発症の精神疾患を持つ方の治療や支援にかかわることができます。これらの経験により疾病の治療と支援に関する理解を深められ、児童思春期のみならず成人の患者さんへの対応する際にも参考となることでしょう。

    多職種による児童外来のカンファレンスも週一回行っておりますので、各職種の役割を理解しまた意識して相補しながら支援診療にあたるという当院のチーム診療に参加経験していくことができます。

  • 児童OTグループ(作業療法グループ)
  • 患者さんたちにとってはひとまずの居場所としても使っていただきながら、楽しみの場として、また仲間づくりや対人関係スキルの向上の機会として参加できる空間として児童OTグループを用意しています。スタッフは作業療法士を中心に臨床心理士や医師も加わり、孤立してしまいがちな患者さんたちに集団療法的にかかわり、入院された患者さんたちの場合には入院と外来をつなぐ場にもなるようにと意識しています。

    このようなグループ活動に参加することで集団力動や児童思春期心性、また発達障害を抱える児童の心性についての理解を深め、支援や介入の要点を具体的な経験を伴って知ることができるでしょう。

    おまけとして、自分自身の特性について振り返らされる場合もあるかもしれません。

  • 児童思春期の入院治療。
  • 多目的病棟の一部に児童思春期専用スペースをわずかですが設置しています。2011年12月に病棟が移転にともなって、それを拡大する予定です。

    児童の入院患者さんがある程度増えると、個別対応のみならず集団の力を利用した治療効果が期待される場面がたびたび訪れるでしょう。

    入院された児童への密な診療であるとともに、保護者・養育者への支援をいくらか余裕をもった状態で検討・調整する機会でもあります。必要な場合は多職種チームとの連携をとおして、家族や各種社会資源とも連携をもちつつ心理・社会・生物学的に考えながら診療していきましょう。

    一般的な精神科研修に慣れ理解が深まってくると、児童とその保護者・養育者の双方に比較的余裕をもって対応しやすくなるでしょう。

  • 他部署との連携
  • 当院は小児科もある総合病院ですので、当科からは子どもの身体疾患について相談しやすく入院治療中に身体管理が必要な場合が生じても他科と連携を取りながら治療ができます。また同時に院内院外の小児科からも発達障害を含むメンタル面・行動面の問題について患者さんを紹介されるケースがしばしばあります。

    虐待が疑われる場合や虐待がある場合についても、院内の対策チームを介して各部署と連携を取りながら対応に当たるようにしていますので、そのようなケースについても安心して取り組めます。

文責 磯野


【アウトリーチ(訪問によるサービス提供)】

当院には充実したアウトリーチサービスがあり、研修を行えます。
当院でのアウトリーチによる研修がどのような意味、メリットをもつか、経験を交えて述べると以下のことが言えます。

私は以前、慢性の統合失調症を患う夫婦が自宅で暮らしているところに訪問したことがあります。彼らは、症状はあるものの、自宅で好きな絵を何枚も書きながら暮らしておられ、笑顔で私たちを迎えてくれました。彼らは、ニーズに合った医療・福祉の様々なサービスを利用しているとのことでした。その光景は今でも印象に残っており、私の精神科医療に対するモチベーションを上げています。

本来、患者さんにとって病気というのは一部であり、その人らしさというものは病気ではない部分によるものが大きいです。アウトリーチの研修をすることで、このような当たり前のことに心から気がつかされます。つまり、病院では見られないような本人のもつ力に、地域で生活しているクライエントと接することで気が付き、むしろ支援者が驚き、癒されます。一歩病院を出てしまうとその人は病人ではなく、一人の人間として生きているのです。

世界では地域医療に従事する精神科医は、症状をコントロールするための薬物療法や精神療法といった医療的な介入をするだけではなく、他の職種と同様に心理・社会面の問題についても理解し、それに合わせた内服薬の選択や、心理教育、家族療法にも力を注いでいます。そのことがクライエントのもつ力をより引出し、患者ではなく、一生活者として生きることを支援していくことにつながり、本人の人生に対する満足感も高まると思われます。

バンクーバーをモデルとして、そういった世界標準の精神科医療について学び、経験をもつ、医師やコメディカルが当院には多く所属しており、Assertive Community Treatment(ACT:包括的地域生活支援)をはじめとした新たな試みも行っています。アウトリーチでの研修では視野がひろがり、慢性的な精神疾患の治療についてより幅広いアプローチ方法を実体験し、その大切さを学ぶことができると言えます。

文責 石坂


目的 精神科専門医を養成するコースである。
研修期間 1から3年
研修過程
1年目
  • 指導を受けて、F0・F2・F3・F4の典型例の診療ができる。
  • F1・F6の典型例への対処法について理解する。
  • 指導を受けて、典型例の脳波・頭部CT・mRI等の依頼と判読ができる。
  • CPの指導を受けて、基礎的な(神経)心理検査を実施する。
  • 指導を受けて、典型例に対して抗精神病薬・抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬の処方ができる。
  • 気分調整薬・抗てんかん薬の適応について理解する。
  • 指導を受けて、m-ECTを実施できる。
  • 適応例に対して基本的な支持的精神療法を行うことができる。
  • デイケア・作業療法・心理教育を見学し、治療活動に参加する。
  • 保健所・共同作業所・グループホーム等を見学する。
  • 指導を受けて、典型例に対して日中/時間外救急の対処ができる。
  • 指導を受けて、典型例に対して外来・他科病棟での診療依頼に対処できる。
  • 指定医制度と入院形態・行動制限について理解し、診察を依頼できる。
  • 指導を受けて、典型例に対してICに基づいた対処ができる。
  • 指導を受けて、患者・家族・職員の安全確保について理解し、リスクが高い場面で基本的な対処ができる。
  • 指導を受けて、典型例について多職種カンファレンスで医学的な説明ができる。
2年目
  • 必要に応じて指導を受けて、F0・F2・F3・F4の多数例の診療ができる。
  • 指導を受けて、F1・F6の典型例の診療ができる。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例の脳波・CT等の依頼と判読ができる。
  • CPと協議して、基礎的な(神経)心理検査の適応を理解し、依頼できる。
  • 多数例に対して抗精神病薬・抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬の処方ができる。
  • 指導を受けて、典型例に対して気分調整薬・抗てんかん薬の処方ができる。
  • 必要に応じて指導を受けて、m-ECTの適応を検討できる。
  • 力動的精神療法の基礎を理解する。
  • 指導を受けて、典型例に対して心理社会的療法を依頼できる。
  • 必要に応じて指導を受けて、典型例に対して救急の対処ができ、入院適応の判断ができる。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例に対して外来・他科病棟での診療依頼に対処できる。
  • 精神保健福祉法全般と関連制度について理解する。
  • 措置入院の症例を担当する。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例に対してICに基づいた対処ができる。
  • 必要に応じて指導を受けて、患者らのリスクを可能な限り高めないような治療・依頼をすることができる。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例について具体的な治療方針を打ち出せる。
3年目
  • 独力でF0・F2・F3・F4の多数例の診療ができる。
  • 必要に応じて指導を受けて、F1・F6の多数例の診療ができる。
  • それ以外の病態の典型例への対処法について理解する。
  • 独力で多数例の脳波・CT等の依頼と判読ができる。
  • 多くの(神経)心理検査の適応を理解し、依頼できる。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例に対して向精神薬全般の処方ができる。
  • 独力でm-ECTの適応を検討できる。
  • 認知行動療法の基礎を理解する。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例に対して心理社会的療法を依頼できる。
  • 必要に応じて指導を受けて、多数例に対して救急の対処ができ、入院適応の判断ができる。
  • 独力で多数例に対して外来・他科病棟での診療依頼に対処できる。
  • 医療観察法/成年後見制の鑑定に助手として参加する。
  • 指定医のケースレポートを作成する。
  • 医療倫理のあり方について、指導医と討論しながら考察できる。
  • 医療安全のあり方について、指導医と討論しながら考察できる。
  • 各部門の運営に関心を持ち、病棟相談医として指導性を発揮する。
  • CP:臨床心理技術者
  • IC:インフォームドコンセント

※FコードはICD-10による

  • F0:器質性・症状性
  • F1:精神作用物質性
  • F2:統合失調症等
  • F3:躁うつ病
  • F4:神経症
  • F6:パーソナリティ障害